サンドブラストに珪砂が危険な理由!実は有害!
サンドブラスト(略ブラスト)は「砂」を高圧力で製品に噴射して加工を行なう工業技術です。この噴射される「砂」、実は子供たちが遊ぶ公園の砂場のモノではなく、特殊な砂「珪砂」を使用していました。しかし、珪砂は国際基準の見直しによって、ブラストでは使用できなくなってしまったのです。
珪砂がブラストに使えなくなった理由。それは『有害』であるからです。ここでは、ブラストには欠かせない存在だった研磨材「珪砂」について紹介していきます。
サンドブラスト発案当時は珪砂を使っていた!
ブラストが考案されたきっかけは、砂漠地帯の砂嵐に長い間さらされた巨岩が削られていく様子を研究者が見つけたからです。単に砂を岩に振りかけても岩は削れません。砂嵐という強力な圧力がかかった状態の砂であれば、巨大な岩をも削るのです。
ブラスト研究者は、この自然現象を人口的に発生させ、工業技術として昇華できないか悩んでいました。ただ砂を高圧噴射するだけではなく、技術として成り立たせるためには、投射する『砂』の粒子が安定していることが重要だったのです。
ありとあらゆる砂を投射材にして研究を重ね、ようやく出会ったのが『珪砂』でした。珪砂は二酸化ケイ素が結晶化した『石英』を原料に多く含む砂です。粒子の形状が揃っており、硬さも十分にあったため、工業技術ブラストのメイン研磨材になったのです。
珪砂とは石英を主成分とする『砂』のこと
珪砂は二酸化ケイ素が結晶化してできた石英の成分を多く含んでいます。珪砂はブラスト以外ではガラスの原料としても使われています。珪砂の原料でもある二酸化ケイ素はシリカとも呼ばれており、多くの製品に使われていることをご存じですか。
シリカは無水ケイ酸や酸化シリコンとも呼ばれています。実はこのシリカ、地球の表層の約6割がシリカを含む鉱物によって形成されています。ケイ素は植物であるシダ植物やイネ科の植物にも含まれていたり、生物の骨格、人間の体内に必要な栄養素としての側面ももっているのです。
それほど身近にいるのに関わらず、なぜブラストの投射材として使われなくなったのでしょうか。それには、工業規格を決めている国際基準ISOによって珪砂が『危険』だと判断されたからです。
サンドブラスト用の珪砂は国際標準化機構『ISO』で使用禁止になった
ブラストに珪砂が使われなくなったのは、国際標準化機構『ISO』で使用禁止になったためです。スイスのジュネーヴに本拠地を置くISO。さまざまな『基準』を決めている国際機関でもあります。
このISOがどうしてブラストの珪砂使用を禁じたのか。それは珪砂が人体に重篤な病気を引き起こすことが分かったためです。日本では一時期『石綿』アスベストが問題になりました。アスベストが人体に有害であることが報道され、それまで当たり前に使われていた石綿が使えなくなってしまったのは記憶に新しいことでしょう。
珪砂そのものには大きな問題はありません。しかし、サンドブラストで製品に投射することによって、珪砂の粒子が投射時よりも細かく粉砕され遊離シリカが発生するのです。この細かい粒子が肺にたまっていくことで、重篤な病気を引き起こします。
ブラスト先進国だった北米では、ブラスト従事者の病気が頻発しました。アメリカではブラストで珪砂を使うだけで法律違反として裁かれるなど、厳しく管理されています。
珪砂に含有するシリカが引き起こす重篤な病気。それは『珪肺』です。次の章では、この珪肺がどのような症状を引き起こすのか説明していきます。
※シリカの含有しない珪砂は産地指定で現在も使用されているケースもある。 但し、日本のJIS規格から珪砂は除外されています。
珪砂が危険な理由は『珪肺』の原因だから
『珪肺』とは、珪砂のシリカ粒子が肺に蓄積されることで引き起こされる病気です。珪肺症や珪粉症などとも呼ばれています。16世紀にはすでに発見されている病気で、石切職人らが疾患しました。この珪肺、実は先ほど説明した『じん肺』の症状にも似ている病気なのです。
珪肺とは『じん肺』の一種
珪肺の病理的分類は『じん肺』の一種として分類されています。じん肺は細かい粒子の粉塵や微粒子を長期間吸入することで引き起こされる肺疾患の総称です。日本の法律には、このじん肺防止のために制定された『じん肺法』があります。
じん肺法は、じん肺予防や健康管理などの措置を講ずることで、作業従事者の健康の保持、その他福祉の増進に寄与することを目的として昭和35年に制定されました。このことからわかる通り、じん肺は普通に生活している状態では発症せず、特殊な労働環境で引き起こされる『職業性肺疾患』なのです。
じん肺の原因になる物質としては、珪砂以外に
• 綿 • コルク • さとうきび などの有機粉塵と
• アスベスト • アルミニウム • 炭素
などの無機粉塵、そして有機でも無機でもないその他の物質の3種類があります。どの粉塵でも防止方法は次の4つが基本となります。
• 粉塵の発生を抑える • 労働環境からの粉塵の除去 • 外気で粉塵を薄める • 粉塵の吸入を防止する
じん肺法では、事業者が作業者の定期的な健康診断を義務付けるなど、厳しく管理されている病気なのです。
珪肺の危険度
じん肺には吸入する物質によって危険度が異なります。珪砂が原因の珪肺では、症状の進行具合によって危険度が3つに分類されます。
1. 急性珪肺…数週間~5年以内 2. 加速性珪肺…5年~10年以内 3. 慢性単純性珪肺…10年以上
どれも危険な状態になると死に至りますが、吸入した(作業に従事した)期間が長いほど珪肺の症状が重篤になります。
急性珪肺は、数週間~5年以内で発症した場合に分類されます。別名『シリカ蛋白症』とも呼ばれており、重症の息切れや咳、衰弱や体重の減少などが短期間であらわれ、重篤な状態になると死に至る病気です。
加速性珪肺は、作業従事後5年~10年以内に発症した場合の分類になります。急性珪肺の次に進行が早く、合併症も引き起こしやすくなる恐ろしい病気です。合併症が重篤化すると『複雑性珪肺』に分類され、より深刻な呼吸障害を引き起こします。
慢性単純性珪肺は、作業従事から10年以上たってから発症する場合の分類です。一般的には10年~30年以内に発症すると言われています。珪肺ではもっとも多い症状で、初期症状は軽いものの、慢性的な咳や息苦しさによって判明することが多いです。
呼吸困難や咳といった、わかりやすい症状があれば早期発見で治療もしやすいです。しかし疲労や食欲不振、体重の減少や胸の痛みなどの症状が発現している場合は、早期発見が難しく、症状の悪化により急性珪肺や加速性珪肺が発現して重篤な状態になる場合があります。
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